「おぼえている手帳」の基本的な使い方
おぼえている手帳は、「手帳」と名がついていますが、使い方にちょっとしたコツがあります。
まず予定ではなく、出来事を書きます。次に写真を組み合わせます(本体のポケットはそのためのものです)。
出来事については、認知症の方は、特に短期記憶の保持が難しいと言われています。その程度も人によってまちまちです。だから、文字を書くことができてもお一人で書き上げるのは難しいかもしれません。そこで、次のような方法をおすすめしています。
○その場ですぐに書く
何か出来事があったらその場ですぐに書くことです。たとえば、外出したらその場で書く。その風景を見ながら書きます。
これならば、見たことを書くことになるのでさほど難しくはないと思います。
○周りの方がサポートしてあげて書く
ご家族や介護されるスタッフの方が、その人が経験した出来事を後から教えてあげて、書いてもらう。これは、相互に信頼関係があることが前提になります。ともあれ、高齢者ご本人が、ご自身の字で自分が経験したことを書きます。
○ときどき見直す
おぼえている手帳にとって一番大きな使い方がこれです。ご自身の書いた文章を読み、そこに組み合わされた写真をみることで、ご自身の出来事を擬似的に追体験できます。ひょっとしたら記憶に残っていることがあるかもしれません。その場合は鮮明に思い出すきっかけになります。
また、記憶がなくても、自分が写っている写真を見て、自分の字で書いた文章を読むことで、そして日付を確認することで、その記録が自分に関することだと実感できます。
○おぼえている手帳の効能
これがおぼえている手帳の効能です。記憶の代わりとして記録をしておく。そして後で見返すことで時間を追体験する。「おぼえている手帳」が、はやりの電子デバイスではなく、紙の記録媒体を使って実現されているのは、ページをめくる冊子上の構造が、時間の感覚を理解するのにちょうどいいからなのです。