「おぼえている手帳」は、高齢の方の能力をうまく活用します
認知症の高齢者の方が持っている力を、「おぼえている手帳」はうまく活用することを目指しています。またその結果として、記録が蓄積されます。さらにそれを見直すことで、ご自身を構成している世界のイメージが作られます。
では、どんな能力を活用しているのでしょう。順に見ていきましょう。
まず、書く力です。日本人の文字の読み書きの能力は、一般に人口の99%ぐらいだと言われています。つまり義務教育を受けた日本人ならば、日本語を読み書きする力は基本的に備わっていると考えて差し支えないでしょう。ましては、高齢の方々が小学校から中学校の時代は、パソコンはおろかスマートフォンもないような時代です。本を読み、紙に書くことがメディア体験のすべてだったわけです。だから、書く力はそれまで使っていなくても、もう一度ペンを持つことで復活するはずです。
次に見る力です。周囲の方が撮った写真を見てそれを再確認することで、そこに写っている自分の姿や風景を確認できます。それが過去であり、自分がそこにいたことが目で見て確認できるのです。
そして、ページをめくる力です。「おぼえている手帳」は、冊子状になっており、本やノートと同じようにめくることができます。自然とページをめくることで、そこに記録された文字や写真の連続が、時間の経過として感じられます。
このように、「おぼえている手帳」は、認知症の高齢者の方が持っている力を活用することで、無理なく記憶を持っている感覚を再現しようとしているのです。