「おぼえている手帳」は、記憶のつえです。

一般にアルツハイマー型認知症の人は、いわゆる短期記憶の保持がむずかしいと言われています。
つまり、その日の午前中とか、1時間前、10分前のできごとを記憶しておくことがむずかしいのです。若いときのことはおぼえていても、ついさっきのことはおぼえていない。
これはそういう症状なのですから、ある意味仕方がないことです。ともあれ、ものを見て、考えて会話をする力は残っている。
そこで、役立つのが「おぼえている手帳」です。
認知症の人とのコミュニケーションには、「おぼえている手帳」があると何倍も楽になります。
「おぼえている手帳」を開いた右側には、出来事を書いておく欄があります。左側は写真を入れるポケットになっています。そしてここに出来事を書き、そのときの写真を撮っていれておきます。
こうすると、その文字や写真を見ながらコミュニケーションができるようになります。
つまり、最近のことをおぼえていることができないご本人の記憶のかわりになるのです。
これが、記憶のつえということです。
つえをつかうことで、歩くことが楽になるのと同様に、「おぼえている手帳」は、記憶の保持がむずかしい人であっても、写真と記録を頼りに会話をし、コミュニケーションができるようになるのです。